熱傷(やけど)をしたら、どうしたらいいの?

 

身近な外傷・・・「やけど」。日焼け、熱湯、油跳ね、ストーブ、ヘアアイロン、湯たんぽなどなど・・・寒くなる季節、周囲にはやけどの危険が。家庭で起こるやけどについての疑問にお答えします。

Q1.やけどをしたら、まずどうしたらよいのですか?

A.やけどをしたら、第一に患部を冷却することです。最初の冷却が不十分ですと、軽く済むはずのやけどが深くなり、治りが悪く痕が残ってしまう可能性もありますから、大変重要なステップです。病院を探したり、救急車を呼んだりするよりも、水道に直行して、衣服の上からでも流水で冷却します。水道水がない場合や、病院へ移動を開始する場合、流水では冷却しにくい部位の場合などは、保冷剤をハンカチなどでくるんだものを使用してください。冷たくて痛くなるほど低い温度で冷やす必要はありません。また冷却時間は15分から30分を目安にしてください。乳幼児の場合は体温が下がって寒くならないように注意してください。発熱時に使う冷却ジェルやスプレーなどは使用しないでください。

Q2.どの診療科、病院に行けばよいのですか?

A.日本熱傷学会には、形成外科医、救急医、皮膚科医などが所属しています。私も含め形成外科専門医の場合は、重傷熱傷患者の管理や皮膚の再建、熱傷瘢痕拘縮(やけどが治った後の痕やひきつれ)の手術やリハビリなど、トータルで診療経験があります。熱傷診療に少しでも精通している医師をあたるのが最良です。また、形成外科は創傷(皮膚の損傷)を特に専門的に診療する科です。次号に後述する湿潤療法や治癒後のアフターケアも含めて日常的に診療しています。

 やけどの面積が、患者さんの手のひらで10枚分以上あれば、総合病院での入院管理が必要なこともあります。

Q3.やけどの痕は残るのですか?

A.損傷が皮膚のどの深さに達しているかによって決まります。深さは4段階で示され、浅い順に、少し赤くなる程度ならⅠ度、ひりひりと痛みのある水ぶくれができるものは浅達性Ⅱ度、痛みの少ない水ぶくれなら深達性Ⅱ度、焦げたり黄色く固い皮膚に変性してしまったものはⅢ度と表現します。Ⅰ度と浅達性Ⅱ度は「浅いやけど」で、皮膚が再生し、痕が残りません。深達性Ⅱ度やⅢ度は「深いやけど」で皮膚が再生せず、何らかの痕を残して治癒します。この深いやけどでは、皮膚移植が必要なことがありますが、移植してもその手術痕は必ず残ってしまいます。また、浅いやけどは2週間以内に治りますが、深いやけどはそれ以上かけないと治りません。つまり、2週間以内に治ったやけどは痕が残らないということになります。

次の写真はⅠ度と浅達性Ⅱ度の混在です。

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 次の写真は浅達性Ⅱ度です。右は治癒後です。一見ひどいことになっていますが、浅いやけどですので、痕は残らないです。

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次の写真は一部が深達性Ⅱ度です。右の写真は治癒後ですが、痕が残っているのがわかります。

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次の写真は2枚ともⅢ度熱傷です。

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最初の冷却が不十分だと、2~3日かけてやけどが深くなることがあります。最初は赤いだけだから放っておいたところ、次の日には水ぶくれができてしまったというパターンです。また経過中に細菌に感染したり、誤った処置方法を行ってしまってもやけどが深くなることがあります。浅達性Ⅱ度熱傷に下手な民間療法を行ったがために深達性Ⅱ度となり、ひきつれを残してしまうパターンです。したがってしっかり冷却することと、正しい湿潤療法を行ってくれる医療機関を選定することが、痕やひきつれが残るか残らないかの分かれ道ということになります。

 Q4.水ぶくれになってしまった。どうしたらよいのでしょうか?

A.水ぶくれの皮をめくって取ってしまっては傷が露出し痛みを強く感じます。しかし、パンパンに膨らんだ水ぶくれをそのままにしておくことも内圧が高く痛みを感じます。当院では水ぶくれを切開し、中の液体(浸出液)を抜いて、再度溜まらないようにしておきます。もし家庭で水ぶくれが破れても無理に皮を取らないでください。1~2週間ほど経過したら水ぶくれの皮を除去します。あまりに長く残しておくと内部で細菌感染を起こす危険があるからです。

 次の写真は浅達性Ⅱ度熱傷ですが、水ぶくれの膜を天然の被覆材として、そのまま治療しました。右が治癒後です。

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 Q5.やけどの治療方法や家庭での処置方法を教えてください。

A.受傷当日は、ハンカチなどでくるんだ保冷剤などで軽く冷却を続けてください。Ⅰ度のやけどは皮膚が赤くなる程度ですから、炎症を抑える塗り薬などを一日に何回か塗布してください。Ⅱ度以上では、傷の状態になって、ジクジクと浸出液が出ている状態です。以下の2原則で処置することが肝心です。

1)創部に消毒液はつけない。シャワーで毎日創部を洗浄すること。

消毒液をつけても細菌感染を予防する医学的根拠はありません。むしろ正常な細胞を障害し、やけどの治癒を遅延させる恐れがあります。家庭用シャワーでしっかり洗い流すことの方が傷を清潔に保ち細菌感染を予防します。石鹸がついても構いません。

2)創部を乾かさない。正しい軟膏や創傷被覆材を使用し、湿潤療法をすること。

傷から染み出る浸出液は自己再生を促す成長因子がたくさん含まれています。処置せず放置したり、綿のガーゼを当てて浸出液を吸わせすぎると、乾いてかさぶたが付着し成長因子が機能せず、逆に治りが悪くなるのです。浸出液の量に合わせて非固着性ガーゼと軟膏を使用したり、ハイドロコロイドと呼ばれる創傷被覆材を使用し成長因子とどめるようにします。(湿潤療法)水ぶくれの皮を取らないのは、天然の被覆材といえるからです。食品用ラップを使用したり薬局で購入した被覆材を使用したりする方もおられますが、誤った自己処置は悪化を招くので注意です。

 毎日シャワーで洗浄してその後湿潤療法の処置をする、この繰り返しで治るの待つということです。

次の写真はハイドロコロイドできれいに治癒したⅡ度熱傷です。少し深そうで心配しましたが、右の写真のように適切な治療で何とか痕が残らずに治りました。

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使用した被覆材はデュオアクティブです。dscf5023

Q6.やけどが治った後に気を付けることはありますか?

A.半年から1年は、風呂上りは保湿を、朝は保湿と紫外線対策をすることを習慣にしていただきます。やけどが治った後、約2~3週後から炎症後色素沈着と呼ばれる暗赤色~茶褐色のメラニン増生が生じます。3か月から6か月程度で自然に改善することが多いですが、この間に紫外線を浴びると炎症後色素沈着が助長され、いつまでも黒ずんているということになってしまいます。

特に痕が残った場合では、乾燥が強くなります。そのため痒みが出て掻いてしまったり、バリア機能が低下し皮膚炎を起こす恐れがあります。これもまた炎症後色素沈着を助長するため、保湿ケアが必要なのです。

痕がひどく残ってしまった場合は上記以外にも圧迫療法や内服治療など、定期的な診療が必要となります。形成外科専門医と相談していただくことをお勧め致します。

瘢痕のメカニズムと治療、臨床に生かせること。

第42回日本熱傷学会に参加してまいりました。

IMG_0443今回のお目当ては、形成外科専門領域講習といって、形成外科専門医の維持・更新に受講すべき講演を聞くことでもありました。大学の教授先生の講演でした。

内容はやけどのみならず、瘢痕(きずあと)全般でしたので、明日からの臨床にもいろいろつながる最新知識を得ました。実際の現場で感じることと合わせて、まとめてみます。

ケロイド・肥厚性瘢痕の発生しうる創の深達具合

 患者さんにはよく、皮膚の断面図を見せて、真皮の真ん中より深い傷は痕が残ると説明しています。組織学的には真皮乳頭層あたり、8/1000inch 0.2mmの深さまでだと、肥厚することは無い、真皮網状層に達すると深くなるにつれて肥厚の具合も強くなる。これを実際にボランティアのヒトで実験した写真を見せていただきました。たとえばニキビの炎症も、どの深さまで強く炎症を起こして組織が破壊されたか、これが乳頭層までなら痕が残らないが、網状層に達していたら肥厚性瘢痕になりえたり、ニキビ跡が残ることになります。また、採皮部位も確かに肥厚性瘢痕になってしまった人がいますが、どの深さで採皮するかが、一番大きな要因と思います。

 ちなみに浅達性2度熱傷の水ぶくれが破れたとき、水疱底が赤いとホッとするのですが、真皮乳頭層の豊富な血管網が赤く見えているのです。

 ケロイド・肥厚性瘢痕はこの真皮網状層での強い慢性炎症の結果。

ケロイド発生の局所因子

部位 頭頂部、上眼瞼、下腿前面にはまず発生しません。講演では、頭頂部も下腿前面も皮膚が動きにくく、力学的な刺激がないから。また上まぶたは皮膚が柔らかく、傷に緊張がかかりにくいから。たしかに、でも、上眼瞼と鼻根部にかかるような傷だと、偶に肥厚してしまうケースを私は経験します。鼻根部になると、まぶたの動きに対して緊張がかかっているからと考えられます。

力学的な刺激 真皮網状層は傷が治癒しても3か月かけて抗張力が90%まで回復します。この間に、ストレッチがかかるとケロイドが発生しやすいと言われます。3か月は安静が必要ですが、リハビリも必要なので、どうするかということです。

 ケロイドの重症化しやすい方向があります。たとえば腹部のケロイドは縦方向に伸びていきますし、胸のケロイドは横方向に伸びていきます。腹部は腹直筋で縦方向のストレッチがかかりやすい、胸部は大胸筋の運動で横方向のストレッチがかかりやすい、伸ばす方向にケロイドが大きくなるのなら、その方向に対し垂直に切った傷はケロイドになりにくいということです。垂直方向に切れなくても、その方向の成分を少しでも少なくする努力が必要です。このことを腹部正中切開のデザインで示していましたが、私も初めからジグザグもしくはウェーブと思います。横切開は肥厚性瘢痕の炎症が比較的早く治まります。(実際はそうでもない人も経験していますが、2年あればかなり良くなっているかと思います)

ケロイド発生の全身因子

高血圧 メカニズムはまだ研究中とのことですが、固くなった血管にストレッチがかがると、正常より多くの発生因子が出るらしい。ケロイド体質に高血圧を伴っていると要注意。

サイトカインの多い人、時期。 キャッスルマン病でIL-6が過剰な人の例が出ていましたが、熱傷において、サイトカインストームの時期の手術はケロイドリスクが高くなると。採皮も含めて。

性ホルモン エストロゲンが多いとリスクが高くなる。なので若い女性はホクロの除去も注意が必要。テストステロンも同様。男性は40代でテストステロンが減っていくので、女性より、リスクのある時期を早く脱する。

ケロイド・肥厚性瘢痕の重症度は上記の局所因子と全身因子と遺伝因子(ケロイド体質)で影響されます。

 

保存的治療について

手術治療については割愛しますが、私が今回当院でもちゃんと導入したいと思ったのは、シリコンテープのメピタックと、ステロイドテープ(ドレニゾンがweakに対して、strongの)エクラープラスター。小児など皮膚の薄い人はドレニゾンが第一選択かもしれないが、成人はエクラ―が良いようなお話でした。肥厚の薄い初期から使うべきです。

シリコンジェルシート(エフシート、ケアシート)はなるべく大きく張ることで張力の掛かりを抑える役割があります。私は圧迫が目的と思っていました・・・。

赤みの治療でよくdyeレーザーを打つ方もいますが、ロングパルスNd:YAGで深く真皮網状層まで到達させないと効きにくいようです。

やけどの痕は残るのか?

 前の投稿記事では、やけど(熱傷)の深さと痛みについて述べてみました。
 まとめてみますと、

・1度熱傷は、表皮まで。赤くなり痛い。
・浅達性2度熱傷は、真皮の浅いところまで。水ぶくれで痛い。
・深達性2度熱傷は、真皮の深いところまで。水ぶくれで痛みが弱い。
・3度熱傷は皮下脂肪より深いところ。羊皮紙様で痛みなし。

外来で、よくある質問は、「うちの子のやけどは、痕(あと)が残りますか?」です。この質問に簡単に答えるとすると、

「1度熱傷から浅達性2度熱傷ならば痕(熱傷瘢痕)は残らず、深達性2度熱傷より深いやけどでは痕が残ります。」

実際の現場は、さらにその中間のようなやけどもあるので、一言では申し上げにくケースもあります。

つまり、痕が残るかどうかはやけど深さによるということです。なぜかというと、浅いやけどでは、皮膚表面の表皮を再生する細胞が真皮に残存しているからです。しかし深くなれば、表皮を再生する細胞は損傷し、代わりに生き残った周辺の健康な皮膚から、表皮ではない上皮と呼ばれる表皮もどきが、やけどを修復することになるからです。これが、見た目には、やけどの痕なのです。

では、痕が残るかどうか、判断の指標です。

1)受傷時~数時間の症状での指標 (痛いか痛くないか)

 赤みだけ、水ぶくれでもかなりヒリヒリと痛いものは浅いやけどで済んだということですので、痕が残りません。しかし、水ぶくれを除去してやけどに触れられても痛くない、炭化しているといったものは、やけどが深く、痕になって治っていきます。



ところが、やけどというものは、受傷機転(火炎か、熱湯か、油か、蒸気か、化学物質かなど)によって、また、初期治療の内容、感染(もしくはばい菌の付き具合が多い)、全身状態なども影響して、受傷時にはやけどが浅く診断されても、1~3日後に深いやけどに進行してしまうことがよくあります。そこで、次の指標です。



2)治癒するまでの期間による指標 (2週間の壁)

 通院で治療する程度のやけどでは、おそらく外皮用剤や、被覆材で治療されますが、2週間以内に治ったやけどはおおよそ痕は残りません。逆に処置を開始して、もう3週間たった、なんていうケースはおそらく痕が残ります。つまり、浅いやけどは2週間以内に治る。それ以上かかるものは深いやけどであるということです。



 ちなみに深いやけどでは、皮膚移植(植皮)が適応となることがあります。よく勘違いされるのは、皮膚移植をすれば痕が残らないとおもっていらっしゃる方が見えます。植皮の痕が残ります。しかし、植皮をすることで早く治し、拘縮という、やけどのあとがつっぱってしまい運動が制限されるようなことを防ぎえます。

 途中で述べましたが、大切なことは、受傷後、やけどの深さを進行させないように治療を行うことです。不適切な判断は残念な結果につながります。(どんな病気もそうですが・・・)

 もう1点、今回は熱傷瘢痕といってやけどの痕が残るかどうかという問題の、基本的な考え方を述べました。しかし、瘢痕以外にも色素沈着が長きにわたって残存したり、逆に色素脱失といって、白っぽく抜けたように痕が残ることもあり、これらは浅いやけどでも、経験することはあります。

熱傷は、形成外科専門医にお手伝いさせていただくのが良いかと思います。

やけど-深さと痛みの関係

 熱傷(やけど)は身近な外傷で、誰もが少なからず経験されることです。

受傷は調理中の火や、鍋、油、熱湯、炊飯器の蒸気、暖房器具など、日常にありふれています。
さらに身近な熱傷は日焼けです。
また、花火やたばこ、摩擦熱などなど、ちょっと油断すると小さいながらも熱傷となります。

やけどは、熱によって皮膚のどの深さまで損傷されたかが、重症度の指標の一つとなります。
実際、広範囲熱傷といって、火災、事故、爆発などで運ばれてくる患者さんの生き残る確率(熱傷予後指数PBI)の判定では、やけどの深さ、範囲、年齢を掛け合わせて算出します。(後日詳述します)

さらに深さは、やけどの痕が残るかどうかにも重要な要素です。(これも後日詳述します)

今回は深さと痛みの関係について、簡単に記載します。
深さは1度から3度までで分類されます。


1度熱傷(EB epidermal burn)カルテにはEBって書きます。

 これは皮膚の表皮までのやけど損傷のことを言います。

 かゆいです。ひりひりしますがすぐ引いてきます。
 (例)
 ・一日中、海水浴をして、日焼けで皮膚が真っ赤になってかゆい!
 ・調理中に熱い鍋に一瞬触れてしまって、赤くなった!ヒリヒリ痛い!

 つまり症状としては赤くなるものは浅くてすぐ直る軽いやけどです。


浅達性2度熱傷(SDB superficial dermal burn)

 これは皮膚の表皮を超えて真皮まで損傷したものです。しかし真皮にも厚みがあります。真皮の比較的表面までの損傷を表します。

 痛いです。ヒリヒリします。冷やしても、やめると痛いです。数時間すると少しずつやわらいできます。

 見た目は水ぶくれになります。

しばらくして水ぶくれが形成され、ヒリヒリ痛みがあるのが特徴です。


深達性2度熱傷(DDB deep dermal burn)

 真皮の深い所まで損傷するとDDBと言われます。この深さまで損傷してしまうと、痛みを感じる知覚神経の終末が破壊され、浅いやけどとは逆に、痛みが少ないと言われます。

 私たちも診断上、痛みはどうか聞いたり、実際に水ぶくれの中を処置して痛みが強いか聞いたりします。

 SDBかDDBか。これは大変大きな違いですその一つに痛みの感じ方、もう一つはやけどの痕が残るかどうかもここが境界線になります。


3度熱傷(DB deep burn)

 皮下まで達する損傷です。見た目は固く完全に皮膚が凝固してしまって、医学用語では羊皮紙用とよばれ、字のごとくな感じです。

 痛みは完全に知覚神経がやられてしまい、感じません。


やけどの初期治療についてなど、後日詳述する予定ですが、
受傷したらとにかく冷却です。すぐに!長く!

もし、痛いなーと感じていれば、やけどは浅いと考えられます。痛いのは嫌だけど、浅いやけどで不幸中の幸いと、思って耐えるしかありません・・・。
これが今回の結語です。今日、自分がSDBを受傷したので書きました。

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