漏斗胸、2回の手術

漏斗胸の治療

 漏斗胸という疾患は、形成外科診療の中でも時々遭遇する体幹部先天異常です。
幼児期には胸の中央(みぞおちのあたり)が漏斗状にへこんでいることに気づきます。
成長とともに凹みが右側に偏移してくることもあります。(左右非対称漏斗胸)
肺活量が標準より少ないとか、心電図で異常がみられることもありますが、整容面以外は無症状のことが多いです。

 原因は肋軟骨の形成異常です。

 治療は、手術以外の方法と、手術による治療があります。手術以外の治療は、ごく軽度の時や、手術を受けたくない方に適応されますが、なかなか大変です。へこんだ胸に特殊な器具を付けて、皮膚ごと肋軟骨部を密閉吸引する治療です。バキュームベルとか、いくつか商品が出ております。


漏斗胸の手術方法

●ラヴィッチ法

 今回は手術についてのお話です。以前よりへこんだ胸を切って開けて、肋軟骨を形成して凹みを治すというラヴィッチ法と呼ばれる手術があります。長時間の手術で体に負担があることと、きずあとがガッツリ残る(それほど目立たなくはなってくるのですが、胸の中央部に肋軟骨に沿って山型の瘢痕がわかります)のが、大きな問題点でした。

●ナスの手術
 

 この10年ぐらいでナス法という手術が普及しました。胸の脇に小さなきずを開けて、そこから心臓の前(へこんでいる肋軟骨・胸骨の下)にステンレス製もしくはチタン製の鉄筋のようなプレートを挿入して矯正した状態を保つようにします。もちろん全身麻酔です。また、子供の手術であり、成人(思春期以降)の適応については議論があります。

この手術を始めたのは9年前ですが、わずか1時間程度で終わり、きずあとも小さく、きれいな胸郭形態になるので、大変感動したのを覚えています。それ以来、全国でナス法手術が好きな先生の集まる研究会に参加したり、著名な先生の手術を見学したりして、毎年夏休みになると、何人か患者さんの手術をしていました。(勤務医時代)

ナス法で思うこと

 さて、素晴らしい手術であるナス法なのですが、実際の現場で難しいなあと感じることも話します。

●矯正のプレートは、2~3年で抜去するため、2回手術が必要です。

 その間、胸部にプレートが入ったままです。

 皮膚の下に金属があるので、ぶつけたりして切ってしまうと露出や感染の恐れがあります。装具で保護することもしています。

 飛行機に乗る時にはセキュリティーチェックで証明書を見せなければなりません。
 万が一、心肺停止したら、圧迫式心臓マッサージができません。最寄りの医療機関にわかるよう、証明書は携行してもらうのですが、じゃあ、万が一があったからといって一瞬で抜くことはできません。開胸心マッサージしか、手がありません。

 このプレッシャーについて、患者さんはあまり何も言われませんが、心肺蘇生が仕事の我々にしてみるととっても怖い状況です。

●1回目の手術、プレート挿入。痛みと運動制限があります。

 術後は、矯正プレートでへこんだ胸を持ち上げています。支えにしているのは固い肋骨ですから、ここがとても痛いです。麻酔科と連携して、痛みのコントロールに取り組むこともありますが、1週間程度でだいぶ動けるようになります。どのように痛みのコントロールをするか、術前に主治医としっかり話した方が良いと思います。

 運動制限も3か月から半年は注意です。挿入したプレートの周りが固まるのに半年ぐらいかかりますが、それまでにバーがずれたり、移動されてはいけません。特に体をねじるようなマット運動などは長期に制限します。走ったりするのは比較的早くから認めています。

●2回目の手術、プレート抜去。大変なときもあり。

 患者さんにしてみると、抜く手術はそれほど痛みもありませんし、回復も早いですからすぐ退院になります。しかし、我々術者は、時々大変な時があります。それは肋骨が成長しているので、プレートが食い込んでいることがあるからです。

 感じるのは特に斜めにプレートを入れた時の下側になってる固定具にかぶさるように骨化していることがあります。手動で骨をかじり取ったり、電動ドリルで削ったりして外さないとびくとも動かないので、小さな傷でがんばると、思ったより時間がかかってしまったなんてことになります。


ナス法の今後は

>最近はコンピュータ技術が進んでいます。この手術も力学的にどの位置にプレートをどれだけ入れるかなど、解析したり、結果を予想したりするようになってきました。左右非対称や、低形成を伴っている場合などはそのデザインが難しいと思います。この手術がますます精密な手術で、安全に行われるよう、期待したいと思います。

 

臍ヘルニアの手術時期、臍の形。

臍ヘルニアとは

 形成外科で日常的に治療している先天異常に、臍突出症があります。
おへそが飛び出て一般に”でべそ”と言われます。

おへそはもともと臍帯の付着部位ですから、それが脱落したあと、瘢痕(きずあと)となったのがおへそであります。

 この瘢痕が盛り上がっているのみの場合と、この瘢痕の下の壁(腹壁)が弱く、腸が押し出してくるでべそ、臍ヘルニアと、2通りのパターンがあります。


よくあるケース

 臍ヘルニアのお子様をお持ちのママはちょくちょくお見かけします。私の外来にかかってくれている方は、生後まもなく、小児科からご紹介され、圧迫療法を開始します。しかし、小児科で圧迫療法についてお話は聞いたものの、それっきりっていうパターンも結構多いように見受けられます。

 そういうママが、うちの子は2歳ですが、今後どうしたらいいんですか、と質問されます。


手術の時期、適応

 臍ヘルニアの場合は生後すぐに圧迫療法といって、コインを貼り付けて圧迫しておくよう、指導して、経過を待つことをします。さすがにコインでは何の工夫もないので、最近は高性能なスポンジと高性能なテープや粘着フィルムを使用します。ヘルニアの大きさによりますが、2歳までにかなり高率に治癒すると言われています。しかし、2歳を過ぎると、自然治癒の可能性が低くなってきます。

 ちなみにヘルニアのない臍突出は圧迫しても治りません。

 では、2歳を超えたらいつ手術するか。放置してもほぼ問題ないので、見た目が気にならなければそのままにしても良いと思います。嵌頓ヘルニアといって、腸が押し出されたまま引っかかってしまうとまずいのですが、この頻度は少ないとされています。

 ★2歳までは圧迫や経過観察で待ちます。
★2歳を過ぎたら臍形成術の手術をします。
★しかし、整容的観点から手術を決めればよいと思います。
 この判断が難しいときがあります。
 たとえば、就園するとプールなどで他のお子様の目に触れるのが心配っていうのも理由です。
 しかし、2歳の手術は全身麻酔です。そこまで今やるべきか、と思う方もいます。高学年以上になると、局所麻酔でも可能な手術です。
 また、症状が軽い場合(臍としては、軽くは窪んでいるが、腹壁が弱く、ヘルニアとして軽度膨隆あり)など、迷います。

 主治医との相談です。

臍のかたち

ちなみに作る臍の形ですが、形成外科医は結構みんなこだわって作ってるんではないでしょうか。

(以下、形の分類名は雑誌形成外科56巻:11~17,2013を参考にしています。)


 やはりどうせ作るなら縦べそですか。アーモンド型です。縦べそを作る方法も数多く発表されています。

 縦長で上向きの臍は一番人気があります。たしかに、へそピアスの施術をやっていると、アーモンド型の方は、割と自慢げにおへそを出して見せてくれるのですが、わずかな臍突出が残っている方や、オーバル型と言って正面を向いている楕円のタイプはそれを隠したくてへそピアスを開けたいと言って来院される方が多いです。

 アーモンド型は大人に多いタイプですが、思春期前ぐらいはオーバル型が多いのではないでしょうか。

 さらに幼少になると、シャネル型(シャネルのマークに似ているので)と言って臍の上縁と下縁に土手があるタイプや、ベル型といって、土手が下縁のみで上向きの若干横長?の臍が幼児には多いのではないでしょうか。

 私は2歳の手術ではわりとベル型を作ってきました。やはり、周りのお子様の形に合わせてということと、手術方法が浸透している方法であること、簡便で上手くいくと作った臍に見えません。またこの方法は(鬼塚法など)臍の周りの皮膚は一切傷つけません。

 しかし、臍の周りに傷痕が残る方法でも、縦型にこだわる先生もみえます。

これも主治医と相談ですね。ただ、その先生の一番慣れた方法になることが多いのかと思います。

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