瘢痕のメカニズムと治療、臨床に生かせること。

第42回日本熱傷学会に参加してまいりました。

IMG_0443今回のお目当ては、形成外科専門領域講習といって、形成外科専門医の維持・更新に受講すべき講演を聞くことでもありました。大学の教授先生の講演でした。

内容はやけどのみならず、瘢痕(きずあと)全般でしたので、明日からの臨床にもいろいろつながる最新知識を得ました。実際の現場で感じることと合わせて、まとめてみます。

ケロイド・肥厚性瘢痕の発生しうる創の深達具合

 患者さんにはよく、皮膚の断面図を見せて、真皮の真ん中より深い傷は痕が残ると説明しています。組織学的には真皮乳頭層あたり、8/1000inch 0.2mmの深さまでだと、肥厚することは無い、真皮網状層に達すると深くなるにつれて肥厚の具合も強くなる。これを実際にボランティアのヒトで実験した写真を見せていただきました。たとえばニキビの炎症も、どの深さまで強く炎症を起こして組織が破壊されたか、これが乳頭層までなら痕が残らないが、網状層に達していたら肥厚性瘢痕になりえたり、ニキビ跡が残ることになります。また、採皮部位も確かに肥厚性瘢痕になってしまった人がいますが、どの深さで採皮するかが、一番大きな要因と思います。

 ちなみに浅達性2度熱傷の水ぶくれが破れたとき、水疱底が赤いとホッとするのですが、真皮乳頭層の豊富な血管網が赤く見えているのです。

 ケロイド・肥厚性瘢痕はこの真皮網状層での強い慢性炎症の結果。

ケロイド発生の局所因子

部位 頭頂部、上眼瞼、下腿前面にはまず発生しません。講演では、頭頂部も下腿前面も皮膚が動きにくく、力学的な刺激がないから。また上まぶたは皮膚が柔らかく、傷に緊張がかかりにくいから。たしかに、でも、上眼瞼と鼻根部にかかるような傷だと、偶に肥厚してしまうケースを私は経験します。鼻根部になると、まぶたの動きに対して緊張がかかっているからと考えられます。

力学的な刺激 真皮網状層は傷が治癒しても3か月かけて抗張力が90%まで回復します。この間に、ストレッチがかかるとケロイドが発生しやすいと言われます。3か月は安静が必要ですが、リハビリも必要なので、どうするかということです。

 ケロイドの重症化しやすい方向があります。たとえば腹部のケロイドは縦方向に伸びていきますし、胸のケロイドは横方向に伸びていきます。腹部は腹直筋で縦方向のストレッチがかかりやすい、胸部は大胸筋の運動で横方向のストレッチがかかりやすい、伸ばす方向にケロイドが大きくなるのなら、その方向に対し垂直に切った傷はケロイドになりにくいということです。垂直方向に切れなくても、その方向の成分を少しでも少なくする努力が必要です。このことを腹部正中切開のデザインで示していましたが、私も初めからジグザグもしくはウェーブと思います。横切開は肥厚性瘢痕の炎症が比較的早く治まります。(実際はそうでもない人も経験していますが、2年あればかなり良くなっているかと思います)

ケロイド発生の全身因子

高血圧 メカニズムはまだ研究中とのことですが、固くなった血管にストレッチがかがると、正常より多くの発生因子が出るらしい。ケロイド体質に高血圧を伴っていると要注意。

サイトカインの多い人、時期。 キャッスルマン病でIL-6が過剰な人の例が出ていましたが、熱傷において、サイトカインストームの時期の手術はケロイドリスクが高くなると。採皮も含めて。

性ホルモン エストロゲンが多いとリスクが高くなる。なので若い女性はホクロの除去も注意が必要。テストステロンも同様。男性は40代でテストステロンが減っていくので、女性より、リスクのある時期を早く脱する。

ケロイド・肥厚性瘢痕の重症度は上記の局所因子と全身因子と遺伝因子(ケロイド体質)で影響されます。

 

保存的治療について

手術治療については割愛しますが、私が今回当院でもちゃんと導入したいと思ったのは、シリコンテープのメピタックと、ステロイドテープ(ドレニゾンがweakに対して、strongの)エクラープラスター。小児など皮膚の薄い人はドレニゾンが第一選択かもしれないが、成人はエクラ―が良いようなお話でした。肥厚の薄い初期から使うべきです。

シリコンジェルシート(エフシート、ケアシート)はなるべく大きく張ることで張力の掛かりを抑える役割があります。私は圧迫が目的と思っていました・・・。

赤みの治療でよくdyeレーザーを打つ方もいますが、ロングパルスNd:YAGで深く真皮網状層まで到達させないと効きにくいようです。

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